ブックタイトル高知大学KICS年報

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高知大学KICS年報

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高知大学KICS年報

展望として決まっていることは3つあります。1つは人口減少の克服。2060年に1億人程度の人口を維持するという人口目標が初めて決まりました。今、日本の総人口は2008年のピークを過ぎて少し下げ止まったところです。問題は将来の予測ですが、おそらくどうやっても2060年までは下げ止まらない。2080 ? 2100年ぐらいになってやっと人口減を止めることができるかどうかというところです。私は1億にこだわるというよりもむしろ、どこかで下げ止まりをする、そのラインを見つけて行くことだと思っています。2つめは出生率を当面の目標として1.8としようということです。少子化がいかに深刻かを申し上げますと、合計特殊出生率は1.43です。とても低いことがわかると思いますが、これでも改善されました。2005年は1.26でした。そこまで日本の出生率は低下していたわけです。しかし、少子化担当大臣を置いて今上がってきていますが、生まれて来る子どもの数は一貫して下がっています。こういう国は本当に珍しくて、日本の危機はここまできています。出生率が上がったにも関わらず、肝心の生まれて来る子どもが減っているのは、各地域で95%以上の子どもを出産している20 ? 39歳の女性の数が減って来ているからです。今回の問題は要するに出生率を上げるためのいろんなことをすると同時に、女性の労働参加率を北欧並みにしたいと考えています。また高齢者についても所得、給与の問題は別としてももっと社会で働いていただくことが必要です。全体としてもっともっとあたり前として、女性の労働力を社会の中で生かして行く必要があります。高齢者も同様です。そして3つめが東京一極集中の是正です。特に1980年代のバブル以降はずっと東京だけに人が集まっています。震災以降は一時期、少し止んだのですが、またぐっと増えて来ています。これはオリンピックの関係もあると思いますが、その東京に集まる人の20歳から24歳の就職時、また15-19歳、これは大学進学時の住民票の移動です。95%の若い層の行く先が東京ですから、一番出産にきびしい地域に人口が減って行くという深刻な問題があります。東京一極集中を是正するという閣議決定はそういう背景があります。こういうことを2060年までに実現するために、当面5カ年、地方における安定した雇用の創出を目標とし、地方への新しい人の流れをつくりたいと考えています。この地方で生産性の上がる産業ができれば若い人たちがまた戻って来るということがあります。その前段として大学進学のために東京に移っているという人もかなりいますので、この大学の問題というのも非常に重要です。それが先ほどの地方の大学の活性化の5カ年戦略につながってくると思います。また、一極集中による東京のリスクだけ申し上げておくと、高度成長期から一方的に人が集まって来て、そのまま高齢化してきています。今の時点で待機介護老人は43,000人をゆうに超えていますが、地方はスカスカです。そういう意味でCCRC(※)のように人口を地方にも戻し、対流するような国家にしていく必要があるというのは、私は首都直下地震よりももっと東京の高齢化のリスクが顕在化してきていると思います。私はこのCCRCを検討する座長になっておりまして、高知大学の受田先生に内閣府の会議にもきていただき、大学を中心としたCCRCの拠点をつくりたいということも含めて、この問題の検討も始まっています。(※)CCRC(Continuing Care Retirement Community)定年後の生活を満喫し得る新たなライフスタイルを提供する高齢者コミュニティ20 | Kochi university Inside Community System | Annual report 2014