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学生レポート:えんむすび隊で気づいたこと


 高知大学リエゾンオフィス コラボレーション・サポート・パークが実施している、高知大生のための 地域で学ぶ、地域を学ぶ 1日だけのSTUDYツアー「えんむすび隊」。平成26年度は36回を企画し、延べ260人の学生が参加しました。

 このえんむすび隊に今年度最も多く参加した農学部2年美馬紀子さん(22回参加)が、えんむすび隊の魅力や地域に出ることで学んだことをレポートとしてまとめてくれました。

 「見たい」「知りたい」という参加動機が回を重ねるうちにどのように変化していったのか、学生が考える自分たちに出来る地域への恩返しは?などなどが語られています。ぜひご一読ください。


「えんむすび隊で気づいたこと」  農学部2年美馬紀子

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 私は、元々地域活性化や地方創生に関心があったわけではありませんでした。むしろ都会に憧れ、限界集落の問題さえ考えていないといった程度でした。えんむすび隊に積極的に参加するようになったきっかけは、学生生活でしか出来ないようなことをやってみたいと思っていた矢先えんむすび隊の募集を見かけ、とりあえず応募しておもしろかったら続けてみようという気持ちで行ったところでした。


 初めてのえんむすび隊の活動は農作業でした。体を動かして働いて、お腹が空いたらお昼ごはんを食べて、また働くといった単純明快な内容でした。しかしよく考えてみると、この過程は生産活動の原点であり、食べる物を働いて得るというのは人間にとって非常に大事なことであると気付きました。この地域に生きる人たちにとっては何の変哲もない日常でありますが、私にとってはとても新鮮でした。おじちゃんは農作業を教えてくれて、おばちゃんは料理に腕をふるい、地域の人が集っておもてなしてくれたことがとても嬉しかったことが印象に残っています。ここには、古きよき日本のふるさとの景色が残っていると思いました。それから高知県下の各地のこうした風景を見て回りたい、また、そこで暮らす人を知りたいと思うようになり、えんむすび隊に足繁く参加するようになりました。


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 安芸市安田町中山地区は、私が初めてえんむすび隊として訪れた地域で、年間で4回も訪問しました。えんむすび隊を続けるきっかけとなったことと、何度も来たこともあって、地域の人との距離が縮まったことから、強く印象に残っています。中山地区では自然薯作りが盛んで、山芋祭りでは多くの人が訪れる地区です。おじいちゃんやおばあちゃんばっかりだったけど、学生に負けず劣らず元気で明るい人たちばかりでした。その元気の源は仲間で集まって話をしたり、行事に参加したりと、誰かと一緒にいることからきているようでした。学生が来ると活気で溢れ、おじいちゃんおばあちゃんがさらに元気になっている様子がわかり、私でも他の誰かを元気にする力を与えられた存在になれたことが嬉しかったです。
 農作業だけでなく地域のお祭りや、イベントの準備を手伝う作業にも行きました。それらを通して見えてきたものは、お祭りやイベントはそこで生きている人たちを元気にする力があるということでした。何か行事があると人が集まり、そうするとやはり活気が生まれます。当たり前のことですが、日頃大学で生活しているだけでは気付かなかったことです。集落において人が集まる機会が無いというのは寂しく、だからこそこういった行事で集落内のコミュニティを形成し、社会を築いているのだとわかりました。このほかの地域ではどんな人がいて、何をやっているのか知りたくなり、お祭りやイベントの参加回数を重ねていきました。


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 長宗我部祭りは、お祭り系で参加した最初の活動でした。主催者にはお祭りによって地域を盛り上げたいという思いがあることが伝わってきて、単に楽しかった、面白かった、という感想だけでなく、どうすればこの楽しさや面白さを大勢の人にアピールできるかということを考えさせられました。地域の魅力は知らなければ宣伝は困難です。自身が体験したことや、地域の人が与えてくれた経験を、外部に発信して、地域活性化に貢献することが参加者としての課題であると思いました。
 自分が起こしたアクションの例として、じゃこサミットに自分で行ったことでした。安芸市のじゃこサミットは台風で中止になりましたが、えんむすび隊として行く日の前日のプログラムは行われるということで、個人的に訪れました。なぜそこまでしたかというと、じゃこサミットがどのようなイベントなのか知りたかったのもあるし、完全にじゃこサミットに行く気になっていたので、このまま行かないのでは悔しかったためです。訪問して驚いたことは、以前のえんむすび隊で出会った地域の人たちに再会し、しかも覚えていてくれたことでした。こうした思わぬところで人脈が広がり、人と人との繋がりがあることがえんむすび隊の魅力でもあります。大学やアルバイト先だけの人間関係でなく、もっと幅広い世代でなおかつ自分が持ち合わせていない価値観を持った人との関わりは、私を成長させてくれました。他人の記憶に残る人間になれたことは、つまり他の誰かから自分のことを認めてもらえたということです。だからこそその人のためを思って自分に出来ることを考え、行動する人に、少しはなれたかと思います。
 ここで挙げた地区だけでなく、思い返せば様々な地方を訪問し、色々な人とも出会いました。よく、1番よかったところは何処だった?と聞かれますが、私は順位をつけていません。なぜなら、その地区にはその地区でよかったところがあり、全く違うよさを持っているので比べられないからです。長所も短所もそれぞれに魅力があって、だからこそ地方はおもしろいのです。
 「見たい」「知りたい」という目的から次第に、えんむすび隊の意義について考えるようになりました。机上では学べない地域でのフィールドワークでわかったことは、地域活性化は地方で生きる人の思いを大切にするということでした。地方には、そこで住んでいる人々の思いがあり、それぞれに物語があります。そういった人々の積み重ねてきたものを、失いたくないと自分自身が思うようになり、地域活性化や地方創生に興味が湧いてきました。訪問した先々では見ず知らずの人間にもかかわらず温かく出迎えてくれる地域の人に、恩返しをしたいという思いもあります。自分のふるさとを愛する人たちに対して自分には何ができるのか、何が課題でどう解決すればよいのかを考えることが使命だと考えています。
 どの活動にも共通して言えることは、地域では人との繋がりをつくっているということです。社会を形成しているのは人間で、地域活性化とは地方に生きる人と人をつなげ、生き生きとした社会を形作っていくものだと思います。どんなに小さな限界集落と言われるようなところでも、人々が生きていた過去があり、今も人が暮らす現在があり、そして未来をつくりたいという意思が地域創生の始まりだと思います。


 えんむすび隊では、一緒に活動してきた学生との思い出もあります。いろんな価値観や意見があって、自分も考えさせられることがままありました。地域の人はもちろん、歳の近い学生との交流でもたくさんの出会いがありました。これまで述べてきた感謝と恩返しといった関係でなく、一緒になって活動すること、同じ目的に向かって課題を解決すると言う関係であることが、学生との交流における1番の特徴です。他人を知ることで新たな気付きがあったり、地域に出ると大学では経験できないことがたくさんありました。おじいちゃんおばあちゃんに元気になってもらうにはどうしたらいいか、お祭りやイベントを盛り上げるにはどんな工夫が必要かなど、日頃勉強していることとはまったく別のことを考え、人と話をすることに生きがいを感じました。赤の他人から徐々に知人になり、ともに解決策を考える仲間になるという、人との関わりがあることに感動しました。
 思えば、地方問題に興味が無かった私が、この一年間を通してよくぞここまで変わったものだと感じます。地域における問題は、実際に入ってみなければ見えにくく、自分自身で体験してきたからこそ思考する力が付いてきたのだと思います。振り返ってみれば、こんな風になれたのも多くの人々と関わってきたからこそあるものです。決して一人では成しえなかったことで、地域や地域に関わる学生にはそうした変化を与える力を秘めています。地域活性化に関心を持ってもらうこと、また、興味がなくても興味を引き出すきっかけを与えられるようになることが自分自身の課題です。一人でも多く地方問題に問題意識を持ってもらい、アイデアがより多様性に満ちてくることを望んでいます。地域の課題を解決することももちろん重要ですが、課題を解決する人を育てることも同時に大切になってきます。大規模な学生と地域を繋ぐシステムを築くことは厳しいかもしれませんが、今出来ることとして、前述の一人ひとりの意識を変えることが、私にできる地域創生の第一歩ではないかと思います。今後、どんな地方に住む人でも生き生きとした幸せな社会になるように、自らの努力も怠らず行動していきたいと思っています。


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